私の生活に潤いを与えてくれるのは、好きな人達と美味しいご飯を楽しく食べる時間。
それに気付けたのはコロナでのロックダウンを経験したからだ。

 

スペインでは、去年コロナの感染者が初めて出た10日後に学校が閉鎖し、その5日後には緊急事態宣言が発令されロックダウンが始まった。

そして、2週間で終わると思っていた軟禁生活は3ヶ月も続いた。

 

ロックダウンから1週間目。私の味覚と嗅覚がなくなった。

 

 

その頃はまだコロナと味覚·嗅覚障害の関係もあまりわかっていなかったため、政府が運営しているインターネットの自己診断では、熱も咳も痛みもない私の症状は「コロナではありません。引き続き自宅待機してください」と出るだけ。

 

不安を抱え込んだ。

 

医療崩壊が始まっていて、病院は重症患者さんですら受け入れていない状況だったので、家でひたすら症状が悪化しないよう祈るしかなかった。何を食べても味も匂いもせず、治療法もなくいつ治るかもわからないと言われ、食べることくらいしか楽しみがなくなっていたその頃はかなりショックだった。

 

 

ロックダウン中でもいつも通りの生活をしようと、最初は取り敢えず色々な物を買い、ひたすらニュースを読んで色々な情報を集めた。

 

でもある時、物も情報も必要以上にあるけれど、満足も安心も全然していないことに気が付いた。

 

潤いのある生活とは程遠いカラッカラの生活。

 

結局は、本当に欲しい物は新しいお鍋やおもちゃじゃなくて、子供が学校へ行ってる間の一人時間だったりお友達と会うこと。本当に欲しい情報は、コロナが収束して元の生活に戻っていいよ~という発表やコロナの後遺症はいつかは治るというニュース。

 

コロナ禍という特別な状況で、優先順位も変わったのだ。

 

 

今までは自分が持っていない物や出来ない事に目が行っていたため、健康でいること、普通に外を歩くことや学校に行くこと、お友達と会うことや買い物に行くことがこんなに大事なんて全くわかっていなかった。

 

素敵な家に住んで、流行りの洋服を着て、自由時間にヨガをして、夜は夫婦でワインを飲むみたいな生活が潤いのある生活と思って憧れていたのが、今は、家族や友達が健康で、自分の好きな人と美味しい食事が出来ればそれでもう十分。十二分に潤っている。

 

 

スペインでは、先日、6か月間続いた緊急事態宣言がやっと解除され、ワクチンキャンペーンも進んで、徐々に元の生活に戻ってきている。

 

まだ、住居人以外を自宅に招くことや、レストランや商業施設での人数制限はあるものの、またみんなで集まって、安心してご飯を一緒に食べれる日が来るのが近く感じられる。

本当に、本当に、そうなって欲しい。

ボカディージョ
スペインでは、夕飯が夜9時や10時と遅いので、夕方5時位にオヤツでボカディージョというパンにハムを挟んだものを食べる。
外園右 Yu Sotozono

1977年東京生まれ。NYに12年在住後、スペインに移住して7年目。2人の子供と夫の4人家族。家事一般が苦手で、手芸と空手が趣味の専業主婦。
最近は、反抗期まっしぐらな娘と宇宙人の息子へ日本語の擬音語と擬態語を説明するのに苦戦中。お肉とお酒が好き。堀潤とは大学時代からの親友。